Posts tagged: 牧村英里子

“Seven Deadly Sins” Vol.3 ENVY on 30.01.2016

Concert performance series “Seven Deadly Sins” Vol.3 ENVY will take place on 30.01.2016 in Kobe, Japan!

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コンサートパフォーマンスシリーズ「七つの大罪」Vol.3 嫉妬編が2016年1月30日(土)、18:00より開催されます。「男女男」と書いて、

嬲(なぶ)る….。嬲り嬲られるのは果たして男女か、男男か。また、若さへの嫉妬、成功に対する嫉みなど、様々な嫉妬がこの世には存在します。人間の感情の中で最も御し難いこのエモーションを、七つの全く違ったアングルから掘り下げていきたいと切望しています。その先に見えるものが果たしてあるのか、それとも無か。胸苦しくなるほどのインテンションとパフォーマンスで、普段皮膚1枚の下に隠してある嫉妬を舞台上では表現し尽くしたいと思っております。

ご来場を心よりお待ち申し上げております!

【日時】

2016年1月30日(土)  18:00開演(17:30開場)

【場所】

うはらホール

【チケット】

一般: 3,000円   学生: 1,000円

e+ (イープラス): http://would.jp  または

mail: 77deadlysins77@gmail.com(牧村) まで

マネジメント/お問い合わせ: KONTA Inc.

tel: 0797-23-5996

www.konta.co.jp

【アーティスト】

佐久間聡一(ヴァイオリン)
西本淳 (サックスフォン)
牧村英里子(ピアノ)

みなさまのご来場を心よりお待ち申し上げております!image

 

Photo and graphic: Taeko Kasama

Thank You Very Much for Coming to “Seven Deadly Sins Vol.2 LUST”!

Thank you very much for coming to concert performance series “Seven Deadly Sins Vol.2 LUST”! 4月19日は、コンサートパフォーマンスシリーズ「七つの大罪」Vol.2 欲望編にお出で頂きまして、本当にありがうございました!

次回のVol.3 嫉妬編は、2016年1月30日(土)18時より、うはらホールにて開催予定です。

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Photo: Diana Lindhardt

「七つの大罪」Vol.2 欲望編プログラムノート其の3

【身を捧げるものを持つということ、そして持つ者同士の邂逅と果てしない貪欲】

S. バーバー:「パ・ド・ドゥ」「寝室での出来事」「遠足」

「パ・ド・ドゥ」とは「2人のステップ」の意味で、本来バレエ作品において男女2人の踊り手によって展開される踊りのことをいう。同性2人による踊りは「デュエット」と呼ばれ、「パ・ド・ドゥ」とは区別される。愛の象徴とも言える男女の踊りを針山愛美は今日、孤高の静寂の中、1人で舞う。

次の「寝室での出来事」は原題を「Hesitation Tango」と言い、字のごとく、典型的なタンゴのリズムがこの曲のベースを支えている。

バレエからタンゴへ。

image                                                          (Photo: Christian Friedlander)

足を痛めて一度は絶望の奈落を落ちていったバレリーナが、小さな劇場から再びタンゴダンサーとしての再起を誓う。

 

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「遠足」。そんなに「遠」くまで「足」を伸ばしたとは思わないうち、気がついたら世界の中心であるニューヨークの街を歩いている自分がいた。つい先ごろまで、場末の劇場でタンゴを踊っていたなんて信じられない。

ニューヨークを制するものは世界を制すという。この街で、必ず成功してみせる。

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ここで、本日「欲望編」を共にする、針山愛美(えみ)という稀有な才能を持つバレリーナについてお話したい。

針山愛美。13歳で単身ソビエト崩壊直後のロシアに短期留学という、バレリーナとしての壮絶な幕開けがあった。

1993年、15歳で今度は正式にボリショイバレエ学校に入学。混乱の極みのペレストロイカ直後下での生活を生き延びる。爆撃などの非常事態宣言の中、配給の途切れがちな店先に何時間も並んだ挙句、パン一つ支給されることがこの上ない喜びだったと言う。長らく両親とも連絡がつかず、日本の家族は娘の生死さえ分からぬ状態だった。

日本人どころか外国人さえ珍しかったであろう当時のボリショイバレエ学校での日々について、私は詳しく愛美ちゃんから聞いたことはない。しかし、彼女が同僚のロシア人たちと話す、強い意志に満ちたロシア語を聞いているだけで、このバレリーナの過ごした生死をかけたモスクワ時代が透いて見えるようだ。

雌伏のときを経て、1996年より”Emi Hariyama” は、文字通り世界中の劇場のプログラムにその名を躍らせることとなる。ボリショイバレエ学校を首席卒業後、モスクワ音楽劇場バレエ団に入団、パリ国際バレエコンクール銀賞(金賞該当者なし)、モスクワ国際バレエコンクール特別賞受賞、ニューヨーク国際バレエコンクールで日本人として初めて受賞・・・等々、続々と快挙を成し遂げてゆく。
また、2002年にアメリカ国際バレエコンクールで決勝に残り、特別賞受賞を果たした様子は『情熱大陸』で放映され、多くの日本人たちがその勇姿に涙した。

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世界中のあらゆるトップクラスのバレエ団からソリストとしてのオファーが絶えることがない。地球単位で縦横無尽に、時差を利用して東から西へ飛ぶことで、2大陸で同日に舞台を踏んだりしている。『地球の自転軸と逆行するバレリーナ』という異名を私から授かって、本当にそうねえ、とおっとり微笑む美しい人なのだ。
怪我や故障に悩んだ日もあったに違いない。しかし、しなやかで強い彼女はそれについての話も触れるか触れぬか程度だ。

私たちが初めて出会ったのは、2007年、ベルリンでの室内楽コンサートの後の打ち上げの席だった。コンサートを聴きにきてくれていた愛美ちゃんに、共通の友人が引き合わせてくれたのが始まりだった。

それから3年後の2010年、愛美ちゃんはまるで隣の駅までちょっと、という身軽さで私が住むコペンハーゲンにやって来た。ショー当日、彼女が会場に着いたとき、私は傾斜する屋根の上に登って、ともすれば滑り落ちそうになる体を必死に支えながら、明り取りの天窓10枚を黒い布で覆う作業に没頭していた。まさか、ピアニストの自分が、ショー開始前に屋根に道具箱とともに登って金槌をふるうようになるとは、ベルリン時代には思いもよらなかった。

私は屋根から下りてピアノの前に座り、彼女はポワントを履き、2人の目がひたと合った。その瞬間から物語は始まったといっていい。

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出会いからちょうど丸8年。この針山愛美というバレリーナと今日この日、知力の限りを尽くして欲望編を演じ切りたい。

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2015年4月19日、「七つの大罪」Vol.2 欲望編コンサートインフォ: http://www.erikomakimura.com/2014/12/七つの大罪vol-2「欲望編」%E3%80%80バレエ&ピアノ/

「七つの大罪」Vol.2 欲望編プログラムノート其の2

【欲すること、望むことを忘れた妻の結末】

E. サティ:グノシエンヌ第1、2、3番

「じゃあ」と、まだベッドの中でシーツに包まったままの妻にちょっと手を上げると、寝室の扉はぱたりと閉じられた。

夫は行ってしまった。ヨーロッパで最も成功している舞台演出家である彼は、再三再四のニューヨークメトロポリタン劇場からの依頼をとうとう断れず、ついに新作の演出を受けることになったのだ。

これから3週間は帰らぬらしい。パリ16区の広大なアパルトマンの中にただ一人、若い妻はぽつねんと取り残された。

 

サイドテーブルに手を伸ばしてデキャンタを引き寄せると、琥珀色の液体でクリスタルのグラスを満たした。ぐっと一息にあおる。

やっとの思いで起き上がると、レコードプレーヤーの前に立ち、エリック・サティのレコードを載せた。腰まである蜂蜜色の髪の一房がはらりと肩越しに前へ落ち、彼女の横顔を覆った。

日曜日の朝、カフェラテを飲みながらサティを聴く ー この行為を夫は悪趣味の極致だと言ってひどく嫌う。パリに住んだことがない三文小説家が、パリが舞台の駄作の冒頭部に書きそうな、いかにもといった通俗性に耐えられないのだという。

この家の調度品も、読む本も、観る映画も、付き合う相手も、すべてにおいて夫の洗練され尽くした趣味が反映していた。その洗練には少し腐乱しかけた退廃の匂いがしていなければならなかった。腐る一歩手前の肉が一番美味なのと同じように。

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この家で、唯一洗練されていないのは私の脳みそだけだわ、と妻は思った。私の脳はとっくに腐敗して機能を失っているから、彼の好む腐臭は漂わせている筈だけれど。

3年前、彼が彼女に求婚したとき、驚いた彼女がなぜ自分なのかと問うた時、彼はあっさりと言った。

「だって君は美しいじゃないか」

私は調度品として、彼の趣味に適ったのだ。個性や人格は、その際完全に無視された。

窓辺に腰を下ろして、煙草に火を点けた。喉を焼いていった琥珀色の液体とサティのグノシエンヌが、彼女の内で渾然となってやがて曼荼羅絵図のように渦巻き始めた。

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グノシエンヌの第1曲目の楽譜には、サティによってこう書かれている。

「思考のすみで・・・あなたを頼りに・・・舌にのせて」

なんて不思議な曲想標語かしら。妻はぐるぐる渦巻く思考を弄(もてあそ)び始めた。

思考のすみに・・・夫はいない。

あなたを頼りに・・・していないわ。出会ってから少しの間にはドップリしていたのにね。

舌にのせて・・・どの男の話かしら。結婚して3番目に寝てみた男は悪くなかった。接吻が上手だった。夫が留守の間に何度かここに呼び出してみよう。

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第2曲目の楽譜には「外出するな・・・驕り高ぶるな」

外出するな・・・ええ、今日はしないわ。明日も明後日もしない。もしかしたら、一生しないかもしれない。

驕り高ぶるな・・・ どうやって驕り高ぶれるというのかしら、私はただの調度品なのに。テーブルや椅子に向かって驕り高ぶるなだなんて、サティったらやっぱり変な人ね。

 

第3曲目は「先見の明をもって・・・窪みを生じるように・・・ひどくまごついて・・・頭を開いて」

先見の明をもって・・・アル中で随分昔に死んだ父親も私にくどくど同じことを言っていた。

窪みを生じるように・・・サティも無粋な男ね。女の体なんて窪みだらけだわ。

ひどくまごついて・・・ええ、演技をするまでもなく。

頭を開いて・・・いいわ、ぱっくりと開いてあげる。ただし、私にまだ頭というものが存在していたらの話よ。

 

4曲目は「ゆっくりと」
・・・レコードはグノシエンヌの第4曲目に差し掛かり、陶然となってもう一杯ウィスキーを飲もうと体を起こしかけたその時。

彼女はにわかにバランスを崩し、煙草の煙を気にして開け放っていた窓の向こう側へ、「ゆっくりと」転落していった。

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2015年4月19日、「七つの大罪」Vol.2 欲望編コンサートインフォ:http://www.erikomakimura.com/2014/12/七つの大罪vol-2「欲望編」%E3%80%80バレエ&ピアノ/ 

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